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私たち中井時計店の歴史は、先代である父が、榛原町萩原の商店街の一角に3坪ほどの場所を構えたのが始まりです。その後現在の店舗に移り、はや半世紀が経とうとしています。
生まれてこのかた父の背中を見て育ち、「将来自分も、この仕事をやっていくんだな」とごく自然に考えていた私は、大学卒業後すぐ店に入りました。同業者の方々によくある、他の時計店での修行は経験しておりません。夜なべする父の仕事をひたすら見よう見真似で、時に厳しく叱られながら技術を身に付けてゆきました。
先代から学んだ、最も大切な教え。それは「ひたすらに、お客様の立場に立つ」という商売の心です。
口酸っぱく言い聞かされました。父はその言葉通りの商売人であったと思いますし、私もまた「お客様に対して親切・丁寧」を常の心得としてまいりました。
また父は、今で言う地域活動にも大変積極的で、町の体育協会の理事長ほか色々な役目を引き受けていました。昼は地域のために奔走し、夜に仕事をこなす父の姿は、当店のモットーである「地元密着」の原点でもあると考えています。
母は母で、昼間は不在がちな父に代わって店を守り、お客様との対応や父の活動のフォローを種々こなしていました。それもまた、大変なことであったと思います。
平成10年に父が亡くなり、この店を引き継ぎました。以来今日まで、バブルや不景気など様々な社会の変動がありましたが、おかげさまで大きな波乱もなく事業を続けてゆくことができました。
ひとえに当店を支えてくださるお客様の、ご厚意の賜物と感謝せずにおれません。同時に、先代が築き上げてきた礎の大きさを改めて感じる次第です。
世の流れは速く、今後ますます私共のような商売人は苦労する時代だと思います。これまで通り信用を第一とし、一人一人のお客様を大切に、仕事に励んでゆく所存です。
そして、いつも皆様のそばにあり、日常生活に溶け込んだ、宇陀榛原の「時計・眼鏡の駆け込み寺」であり続けたいと願っております。
皆様方には一掃のご愛顧のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
